トランヴェルの魔女 10話

第1章

第11話

ドラフ
「ガゼルさん……さあさあこちらの馬車へ…大変だったでしょう…」

ドラフは騎士団の後列にある馬車へガゼルとカリアを案内した…。
彼らは馬車に乗り込み、その場で座り込んだ。

そこに一人の女性が水の入ったコップを持ってきた。
彼女の名前はリリィ。ドラフの部下であり、ドラフの補佐役を担っている。
リリィはガゼルたちに水を手渡した。

リリィ
「どうぞ…」

ガゼル
「ああ…ありがとう…」

カリアはすぐその場で水を飲み干し、大きなため息をついた。
ガゼルはコップを手に持ったまま、コップの中の水を見つめている。

ガゼルの隣にドラフが座り込む……。

ドラフ
「二人ともお疲れのようですな…まあ無理もない…こんなことになってしまってはね…ペルー村のことは我々に任せてここで少しお休みになられてください…」

ドラフはガゼルたちに一礼をし、その場を去っていった。
ガゼルの心の中は不安で一杯だった…。

ガゼル
(もし魔法障壁を解除したことがバレたらどうする…?
 恐らく生きては帰れない…カリアも何されるかわかったものではない……こうなった以上何としてでも隠し通すしかない……でももしばれたら…)

リリィ
「大丈夫ですか?」

ガゼル
「はッ」
ガゼルはいきなり声をかけられたことにビックリし、水をこぼしてしまった。

リリィ
「ああ…ごめんなさい…」

リリィは謝りながら水でぬれたガゼルの服をハンカチでふき取る。

「すぐ代わりの水を持ってきます!」

彼女はすぐその場を離れ、水を汲みに行ったようだ…。

リリィが去った後、再びガゼルは思い悩む。
そして顔色がどんどん悪くなっていった…。

ガゼル
(…大丈夫だ……バレやしない…)

ガゼルは自分に言い聞かせた…。
(あの時私は村長に魔法障壁の不備を伝えている…
 私が装置を操作した事実がばれたとしても何の問題もない…
 そして魔法障壁の操作はごく一部の人間しかできん…
 障壁装置の不備など皆わかるはずがないのだ…)

ガゼルは心の中で言い聞かせる。

(大丈夫だ…大丈夫…バレる要素なんて一つもない…)

不安をかき消さんがために何度も自分に言い聞かせていた…。

(……そもそも私は悪くない…私は魔女にしてやられたのだ…
 大丈夫だ…何も心配はいらない…生きていける…今後も…)

ガタンッ!

(馬車の進行が止まった…?)

騎士団一行がペルー村に到着したのだ。

騎士団長
「なんだこれは……」

騎士団長が馬から降り、村の様子を見回す。
周りには多くの人間と魔物が倒れていた…。

「こいつはひでえや……」

まるで地獄絵図…多くの死体が村に転がっていた…。

「うぅ…」

「おい!生存者がいるぞ!」
騎士団の一人が息のある少女へ駆け込む。

「おい!大丈夫か!?」

「……魔物は…?」
少女は瀕死な声で呟く……。

「意識があるぞ!早く手当を!」

騎士団は生存者を発見しては手当を行い、また村の隅々まで生存者を探し回った。

ドラフ
「ふむ~…」
ドラフは唇を指で撫でながら魔物の死体をじろじろ見ていた。

リリィ
「どうしたんです?研究長……?」
ドラフの隣でリリィが尋ねる。

ドラフ
「いやあ不自然なんですよね~…この魔物の死体」

リリィ
「魔物の……死体ですか?」

ドラフ
「うんー…こいつは焼死体だがね…
内側から発火したような痕跡があるんのよ…不思議だねえ…」

リリィ
「体内から燃えた……?」

ドラフ
「燃えたというより爆発したって感じだねえこれ……
 腹が外に向かって剥がれているからね…まるで破裂したように」

ドラフは魔物の腹に手を突っ込む。
そしてごそごそ腸をまさぐる……。

リリィ
(うわあ……よくそんなところに手を突っ込めるなあ……)
リリィは顔が引きつっていた。

ドラフ
「んーどうやら爆裂弾などの痕跡はなさそうですね」

ズボッと魔物の腸から手を抜き、もう片方の手でカバンから何やら変な道具を取り出した。
その道具の形は長方形であり、大きさは片手で掴めるほどのサイズ、銀色で水筒のようなものだ。
メモリ盤がついており、何かを計測する装置のようだ。

リリィ
「研究長……それ…」

ドラフは魔物の腹にその道具を差し入れた。
道具から音が聞こえる……。ピッピッ…。
そして数分経つとポーンと音声が鳴り響いた。
ドラフは道具を取り出し、道具のメモリ盤に目をやった。

ドラフ
「ほおほお……やはり魔法か…これ見てみ」

ドラフはリリィに道具を見せた。

リリィ
「え…魔法粒子が80%以上超えてる…」

ドラフ
「そうそう……紛れもなく魔法でこいつはやられてるね」

リリィ
「魔法……ですか…?」

ドラフ
「そう魔法…しかもかなり強力な魔法…おかしいと思わないかい?」

リリィはハッと気づく…。

リリィ
「この村にこんな魔法粒子を出せる魔法使いがいるってことですか!?」

ドラフ
「いるわけないだろう」
「騎士団の中でもこれほどの魔法粒子をたたき出せる奴は早々いない」

リリィ
「それでは誰がこの魔物を…」

ドラフ
「リリィ…この魔法粒子を研究所へ今すぐ送りなさい」

リリィ
「研究所へ…ですか?」

ドラフ
「そうだ…早くしろ」

リリィ
「はい…承知しました」

リリィはその場で魔法陣を描き、先程の計測した道具を魔法陣の中心に置いた。
そして何やら呪文を唱えた。

「……転送!」

魔法陣が輝き、計測道具がその場から消え去った。
どうやらドラフの言う研究所へ送られたようである。

ドラフ
「アマミ君に計測と分析と、その結果を今日中に出すように言っといて」

リリィ
「承知しました…」

ドラフはさらにリリィに指示を出す。
「そうだ…後、魔女因子との比較もお願いしといて」

リリィ
「魔女……因子…ですか?」
リリィは驚いた表情でドラフに問いかける。

ドラフ
「君ねえイチイチ僕の指示に反応しなくていいんだよお…
さっさと指示通り伝えてくれないかなあ?」

リリィ
「申し訳ありません…」

リリィは空中に魔法陣を描き、その魔法陣に話かけた。
「こちらリリィ応答願います」

空中に描いた魔法陣は電話のように通話機能がついている。
リリィは誰かとコンタクトを取ろうとしているのだ。

リリィ
「アマミさん応答してください!」

アマミ
<うっせええええなあああああ!!>

魔法陣越しから物凄いでかい声が鳴り響いた。

第11話

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